欧州腎臓学会(ERA)Congress は、世界中の腎臓病研究者、臨床医、専門家が集まる最も影響力のある腎臓学会の一つです。第63回ERA Congress(ERA 2026)では、腎臓病予防、治療、トランスレーショナルリサーチにおける最先端の進歩が紹介されました。

この権威ある学会で、同済病院腎臓内科(華中科技大学付属)が顕著な成果を上げました。10件以上の研究が採択され、その内訳は1件のフリーコミュニケーション、10件の口頭発表、3件の電子ポスターでした。徐鋼教授の指導の下、チームは慢性腎臓病管理、免疫性腎症の精密治療、腎障害修復、血管石灰化メカニズムにわたる持続的なイノベーションを示しました。
目次
慢性腎臓病に対する幹細胞治療
最も注目すべき発表の一つは、ステージ3〜4の慢性腎臓病患者を対象としたヒト臍帯間葉系幹細胞(MSC)治療の2年間二重盲検ランダム化比較試験でした。この研究は、腎臓病に対する再生医療の重要な進歩を示しています。
主要な発見: 臍帯MSCの短期静脈内注入は、2年間の追跡期間において慢性腎臓病の進行を遅らせる有望な結果を示し、中等度から重度の慢性腎臓病患者に新たな治療の道を開く可能性があります。

間葉系幹細胞は、以下の特性により腎臓学で大きな注目を集めています:
- 抗炎症作用: 腎障害を引き起こす免疫応答を調節
- パラクリン効果: 組織修復と再生を促進する因子を分泌
- 抗線維化活性: 瘢痕化を軽減し腎機能を維持
免疫性腎症の精密治療
同済病院の発表の主要な焦点は、免疫介在性腎疾患の精密治療、特にIgA腎症、ループス腎炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎でした。いくつかの研究では、新規デュアルBAFF/APRIL阻害剤**テリタシセプト(Telitacicept)**やベリムマブ(Belimumab)を用いた各種治療レジメンが紹介されました。
主な研究:
1. 活動性ループス腎炎に対するテリタシセプト+タクロリムス+減量ステロイド: この併用療法は、疾患活動性を制御しながらステロイド曝露を最小限に抑える効果を示し、長期ステロイド副作用が大きな懸念事項であるループス腎炎管理における重要なニーズに応えるものです。
2. IgA腎症に対するテリタシセプト+ナルソプリマブ逐次療法: 実世界データは、補体阻害とBAFF/APRILブロックを組み合わせてIgA腎症の複数の病原経路を標的とするこの新規な逐次的アプローチにより有望な結果を示しました。
3. IgA腎症に対するベリムマブ—実世界での有効性と安全性: この研究は、臨床試験データを実際の臨床経験で補完する、IgA腎症治療におけるベリムマブの役割を支持する貴重な実世界エビデンスを提供しました。
4. ネフローゼ症候群を伴う重症紫斑病性腎炎に対するテリタシセプト: ネフローゼ域の蛋白尿を呈する難治性ヘノッホ・シェーンライン紫斑病性腎炎の治療におけるテリタシセプトの可能性を示す説得力のある症例分析が発表されました。
血管石灰化メカニズムの解明
血管石灰化は慢性腎臓病の重大な合併症であり、心血管の罹患率と死亡率に寄与しています。同済病院のチームは、このプロセスを駆動する経路を解明するいくつかのメカニズム研究を発表しました。
空間的単一細胞分析:
画期的な研究では、空間的単一細胞表現型解析を用いて、慢性腎臓病における血管石灰化の病理学的構造を解明しました。この高度な技術により以下のことが明らかになりました:
- 石灰化血管における細胞の不均一性
- 石灰化傾向のある細胞集団の空間的分布
- 血管石灰化予防のための新たな治療標的
エピジェネティックメカニズム:
2つの研究が血管石灰化のエピジェネティック制御に焦点を当てました:
1. DNMT3Aとアルギニン代謝: 研究は、DNMT3A(DNAメチルトランスフェラーゼ3A)がアルギニン代謝の調節を通じて血管石灰化を媒介することを実証し、この病理学的プロセスのエピジェネティック制御に関する新たな知見を提供しました。
2. THOC5とRhoA転写調節: 別の研究では、THOC5がRhoA転写後経路の調節により血管石灰化を抑制する重要な制御因子であることを特定し、この軸を標的とする潜在的な治療戦略を示唆しています。

急性腎障害と高血圧性腎症
慢性腎臓病に加えて、同済病院の研究は、臨床的に重要な2つの病態である急性腎障害と高血圧性腎症にも取り組みました。
急性腎障害メカニズム:
分岐鎖アミノ酸代謝に関する研究により、代謝異常が近位尿細管上皮細胞におけるMiro1を介したミトコンドリアオートファジー制御を通じて急性腎障害を悪化させることが明らかになりました。この発見は:
- 急性腎障害における代謝機能障害とミトコンドリア品質管理を関連付け
- Miro1を潜在的な治療標的として特定
- 急性腎障害予防のための代謝介入に関する新たな知見を提供
高血圧性腎症:
腎リンパ管新生に関する研究は、新しいリンパ管形成が高血圧性腎症の発生と進行を媒介することを実証しました。この研究は:
- 腎臓病におけるリンパ系の役割を強調
- リンパ管新生を新たな治療標的として示唆
- 高血圧性腎障害予防の新たな道を開拓
今後の展望
ERA 2026での印象的な成果は、同済病院腎臓内科の**「臨床問題志向、基礎研究駆動、トランスレーション重視」**の発展への取り組みを反映しています。徐鋼教授のリーダーシップの下、同学科は以下にわたって一貫して質の高い独創的研究を生み出しています:
- 臨床研究: 実世界研究とランダム化比較試験
- メカニズム解明: 疾患経路を解明する基礎科学
- 難症例管理: 難治性疾患に対する革新的アプローチ
今後、同学科は以下を目指しています:
- チーム構築の強化と若手腎臓病研究者の育成
- 腎臓病フロンティアの探求を深化
- 実験室の発見から臨床実践への変換を加速
- 地域および全国の腎臓病治療水準の継続的向上
ERA 2026での成功は、同済病院を中国の腎臓学研究の主要センターとして位置づけ、国際的な学術的影響力を高めています。腎臓病患者にとって、これらの進歩はより良い治療選択肢、より精密な治療戦略、そして最終的には改善された転帰をもたらします。